ごあいさつ

ごあいさつ

新しい環境に相応しい多様性のある研究インフラ

日本国際経済学会 元会長 岩本 武和

このたび、日本国際経済学会の会長に選出されましたことを、大変光栄に思いますと同時に、分不相応な大役を仰せつかったことに身が引きしまる思いがしております。しかし、長らくこの学会で育てていただいた恩返しのつもりで、微力ながら務めさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

ご承知のように、私たちの教育・研究を取り巻く環境は、この10年近くの間に激変しました。透明性や説明責任が問われ、個人や組織の生産性や競争力が厳しく評価される時代になりました。忘れてはならないのは、この10年間にも、若い研究者が育成され、今後もまた、こうした環境の中で新しい研究者が輩出されることです。若い研究者にとって魅力のある学会にするということの意味は、学会もまた、こうした新しい環境に相応しい形で、変わっていかなければならないということだと思っております。例えば、小島賞(特に優秀論文賞)や特定領域研究賞(小田賞)の創設は、若手研究者のインセンティブ向上に寄与する制度として定着して参りました。また、全国大会におけるポスターセッションや英語セッションの試みは、今後も定着させて、学会が新しい形でのジョブサーチの場を提供していくことは、とても大切なことだと考えております。

もう一つ大切なことは、60年以上の伝統を持つこの学会が培ってきた分野間や世代間の多様性を、この学会の資産として次世代へ引き継いでいくことです。私もまた、駆け出しの研究者だった頃、同世代の異なる分野の研究者たちや、シニア世代の先生方から多くのことを学ばせていただきました。しかし他方で、こうした多様化が増すにつれて、分野間や世代間の交流が困難になる側面があることも、また事実です。例えば、会員の専門分野をいくつか登録していただくなどして、学会内の風通しを良くし、全国大会や春季大会、各支部の研究会、またシンポジウム等を企画したり、学会誌を編集したりする際に、できるだけ多くの会員の方々に参加していただけるように努めていきたいと思っております。

最後に、このグローバル化の世界において、日本国際経済学会の国際的な発信力を高めていくことも重要な課題です。一つのチャネルである韓国国際経済学会との学術交流は、すでに20年が経過し、いま少し拡がりと深まりを持った交流に踏み込む必要があるかもしれません。もう一つのチャネルである英文機関誌『The International Economy』については、和文機関誌『国際経済』ととともに、出版委員会の大変なご努力にもかかわらず、未だ会員の研究インフラになっているとは言い難いのが現状です。機関誌は学会の対外的な顔であり、機関誌の学界における評価を高めることは喫緊の課題と思います。一朝一夕には解決が難しい問題ではありますが、何よりも会員の皆様の積極的な投稿こそが機関誌充実の鍵を握っております。

会員の皆様がお持ちの企画やご意見がございましたら、ご自由にお寄せいただき、学会運営とインフラ整備に活かして参りたいと思います。どうかご支援をよろしくお願い申し上げます。

2012年12月1日

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