大会論題

日本国際経済学会 第80回全国大会 共通論題 趣意文

「ポストコロナ、米中デカップリング時代の国際経済体制―グローパル化は逆回転するか」

2019年末に中国で最初の症例が確認された新型コロナウイルス(COVID-19)は、中国で猛威をふるったのち、瞬く間に世界中に拡散しました。各国で感染の抑制を目的とした渡航制限・外出制限が行われ、生産・物流の停止による供給ショックが発生するとともに、外出や人との交流が抑制されたことによる需要減も起こり、各国の経済活動は停滞し世界のGDPと貿易が急速に縮小しました。

各国政府は、健康と経済のトレードオフという危ういバランスの中で、金融・財政政策のテコ入れを行い、世界のGDP成長率は2020年第2四半期で底を打ち、緩やかではありますが経済は回復の途上にあります。さらに、ワクチン開発と普及により、金融市場はポストコロナを見据えていち早く反応し、実体経済も変動を繰り返しながら復活しつつあります。しかしながら、回復のプロセスは一様ではなく、各国間・各国内での経済格差の拡大が懸念されています。このような世界経済の回復過程を把握し、ポストコロナの経済のあり様について考察する必要があります。

 一方、世界は、COVID-19、地球温暖化、多角的貿易体制の進展など、ともに手を携えて解決すべき重要な課題に直面しています。にもかかわらず、近年は米中対立が激化し、世界に亀裂が入ろうとしているかのようです。米国が高率の追加関税を中国製品に課したことから始まる米中の関税引き上げ戦争、ハイテク分野等の機械技術や情報通信ネットワークが国家安全保障に密接に関係することを理由とした米国による中国企業との取引制限と製品・サービスの一部排除など、巨額の対中貿易赤字が問題視されるほどに米中経済は相互依存関係にありながら、米中間の部分的なデカップリングが進行しています。

 この米中デカップリングに基づく米国の圧力により、日本を含めた同盟国も経済安全保障の観点から貿易や投資に関する国内規制の厳格化に動いています。このような流れは、コロナ下においてさらに進行しており、いち早く回復した中国の企業による買収を警戒して、EU、カナダ、オーストラリア等は対内直接投資規制を厳格化し、英国は国内の5Gネットワークからファーウェイの製品を排除するように方針転換をしています。さらに、米国国務省は、2020年5月に「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network)」構想を打ち出し、自由、民主主義、市場経済と言った価値を共有するパートナー諸国によってサプライチェーン構築を目指すとしています。世界は、米国を中心としたサプライチェーンと中国を中心としたサプライチェーンに分断してゆく可能性があります。このような動きは、国際協調重視を提唱しているバイデン政権への移行により、多国間協調主義へと変化するのでしょうか。それとも、かつてとは異なる「新冷戦」へと歴史の歯車を逆回転させてゆくのでしょうか。
 こうした観点から、共通論題「ポストコロナ、米中デカップリング時代の国際経済体制―グローパル化は逆回転するか」では、国際経済学の最新の手法を用いるのみならず、国際金融、国際貿易、政治経済学などの様々な視点から、今日の世界経済の現状と今後の方向性について議論することが重要と考えています。具体的には、以下の問題領域を想定しています。

  1. COVID-19と各国経済
  2. COVID-19と金融・貿易
  3. 米国・中国の経済・通商政策
  4. 米中デカップリングと世界経済への影響
  5. 国際経済体制の現状と展望
  6. その他

多くの方々の報告応募をお待ちしています。

「自由論題セッション」について

全国大会の「自由論題」につきましては、例年通り自由なテーマで報告希望の申し込みを受け付け、それらを幾つかのセッションに分けて構成する方法をとります。プログラム委員会では、予め以下の「セッション」を想定しておりますので、自由論題の報告希望者は、「オンライン入力」において該当セッションを選択してお申込みください。

  1. 国際貿易
  2. 貿易政策
  3. 国際金融・国際マクロ
  4. 開発経済
  5. 直接投資・多国籍企業
  6. 欧米経済
  7. アジア経済
  8. その他各国・地域経済
  9. 国際通商体制
  10. 地域経済統合
  11. 環境・資源エネルギー
  12. 国際政治経済学
  13. デジタル経済
  14. その他

「企画セッション」について

 第76回全国大会(2017年)より、「企画セッション」が設けられることになりました。代表者が事前に内諾を得た上で報告者・討論者を3名ずつ選び、セッション単位で報告を申し込むことが可能です。会員が自ら柔軟にセッションを構成し報告を申し込む事ができ、様々な研究テーマに対応することが可能であるという点で、有意義な試みになることが期待されます。報告の可否はセッション単位で行われ、受理された場合は自由論題の時間帯に企画セッションとして開催されます。企画セッションの詳細については、「報告募集要項」の「企画セッション報告の概要」をご覧ください。

「ポスター・セッション」について

 第70回全国大会(2011年)より、「ポスター・セッション」が設けられました。報告者との密なるコミュニケーションが可能という点で、オーディエンスにとっても大変有意義な報告形式であり、本大会でも引き続き実施いたします。本セッションでの発表を希望される会員は、後述の「ポスター・セッション報告の概要」を参照のうえ、その旨を「報告申込書」を用いてお申し込み下さい。また、第74回大会から、ポスター・セッションの報告者全員に対し、各自1分間の「フラッシュ・トーク」の機会を設けることにしました。フラッシュ・トークとは、大会1日目のポスター報告に先立ち、各報告者がスライド1枚を映写しながら、報告の主張やセールスポイントを簡潔に口頭説明するセッションです。フラッシュ・トークについては、「報告募集要項」の「フラッシュ・トークの概要」に示す要領に従い、ご準備ください。

英語での報告について

 「英語セッション」は、本大会では特別に設けませんが、英語による報告も歓迎ですので、英語による報告を希望される場合は、自由論題の各セッション内でお願いします。なお、「オンライン入力」にて報告言語を選択してください。

インフォメーション



日本国際経済学会 第80回全国大会

東京大学大学院経済学研究科

2021年10月23日(土)・24日(日)


お問い合わせ

第80回全国大会準備委員会

  • E-mail : jsie2021zenkoku@gmail.com
  • 住所 : 〒113-0033
    東京都文京区本郷7-3-1
    東京大学大学院経済学研究科
    第80回全国大会準備委員会宛

第80回全国大会準備委員会

古沢泰治(東京大学)委員長
伊藤亜聖(東京大学)
小森谷徳純(中央大学)
妹尾裕彦(千葉大学)
藤井大輔(東京大学)
Konstantin Kucheryavyy(東京大学)


第80回全国大会プログラム委員会
柴山千里(小樽商科大学)委員長
川端康(名古屋市立大学)
斉藤宗之(奈良県立大学)
佐藤泰裕(東京大学)
田中綾一(駒澤大学)
戸堂康之(早稲田大学)
丸山佐和子(近畿大学)