大会論題

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日本国際経済学会第74回全国大会
専修大学生田キャンパス
2015年11月7日(土) 8日(日)

共通論題「新興国と世界経済の行方-貿易・金融・開発の視点」

第 74 回の日本国際経済学会全国大会では「新興国と世界経済の行方-貿易・金融・開発の視点
-」を共通論題といたします。現在、世界経済は台頭する新興国の諸問題に直面しています。国際
貿易の分野では、新興国の国家資本主義と欧米先進国の自由主義との対立が表面化しています。国
際金融の分野では、アメリカの量的緩和策の変更が新興国経済を不安定化させるとの懸念が生じて
います。また、世界金融危機後に新興国の成長スピードが鈍化したことを踏まえ、開発経済の分野
では「中所得国の罠」をめぐる議論が注目を集めています。このような新興国問題は、今後の世界
経済の行方を左右する重要な課題であると思われます。

国際貿易の分野では、欧米先進国と中国・ロシア・インド・ブラジルをはじめとする新興国との
間で、様々な摩擦が生じています。その背景には、開発途上国として立場を求める新興国と、台頭
著しい新興国をもはや途上国扱いしないとする先進国との対立があります。国内政策・規制など国
境の内側にある制度の調和を求めるアメリカに対し、中国は国有企業などの国内制度を維持しつつ、
あくまで国境措置のみの自由化を進めるとの立場を取っています。また、ウクライナやガスプロム
の問題をめぐるロシアとEUとの紛争も、介入主義に基づく国家資本主義と自由主義に基づく市場
経済との対立とみなすこともできるでしょう。地域貿易協定やGATT・WTO 体制など国際通商・投
資の分野において、新興国と先進国の紛争の原因を明確にし、その解決への展望を議論することが
重要であると考えます。

国際金融の分野では、アメリカの量的緩和策の転換による新興国経済への影響が議論されていま
す。これまでも、アメリカの量的緩和導入やその縮小が、国際資本移動に影響を及ぼしてきました。
とりわけ新興国経済は、資本の流出入や通貨価値の変動を経験しました。急激な国際資本移動は、
新興国のマクロ経済へ影響するだけでなく、金融政策の独立性を脅かすとの指摘もあります。その
ため、ブラジルなどの新興国は金融取引に対する課税など国際資本移動に対する制限を実施してい
ますが、課税や規制の有効性については議論が分かれるところです。アメリカの量的緩和策が、新
興国にいかなる影響を及ぼしてきたのか。国際資本移動の利益を享受しつつ、急激な資本流出入に
よる国内経済の不安定化をどのように防ぐことができるのか。新興国の通貨体制や国際資本移動規
制についての議論が必要であると考えます。

開発経済の分野では、「中所得国の罠」に関する議論が注目されています。世界金融危機後、新興
国経済の成長スピードは鈍化しており、新興国が「中所得国の罠」に陥ることで高所得国へ発展で
きないとの懸念が生じています。「中所得の罠」をめぐる議論の歴史は浅く、その捉え方も明確に定
まっていませんが、新興国が急速な経済発展に伴って多くの問題を抱えていることは事実です。経
済成長は新興国に豊かさをもたらした半面、所得の不平等や貧困、資源エネルギー・環境問題など、
様々な社会問題が生じています。こうした問題を克服しつつ経済成長できるか否かが、現在、新興
国が直面している大きな課題であると考えます。そこで、「中所得国の罠」をめぐる問題を経済成長
スピードの鈍化という狭い意味ではなく、分配、環境、資源エネルギーなど幅広い開発の問題とし
て捉え、今後、新興国がこうした広い意味での「中所得国の罠」を克服し成長するには、どのよう
な改革が必要なのかを議論することが重要だと考えます。

このような問題意識から、貿易・金融・開発の各分野において、新興国に関わる問題を議論する
ことが世界経済の行方を展望する上で重要だと考え、「新興国と世界経済の行方-貿易・金融・開発
の視点-」を共通論題として提案いたします。次のような問題領域を設定して共通論題を討議する機会を設ける予定です。会員の皆さまの積極的な参加とご発言をお願い致します。

①国家資本主義と通商問題 ②国有多国籍企業と自由市場
③アメリカの量的緩和政策と新興国経済 ④新興国と国際資本移動規制
⑤中所得国の罠と新興国の分配問題 ⑥中所得国の罠と新興国の環境・資源エネルギー問題

「自由論題」のセッション

全国大会の「自由論題」につきましては、例年通り自由なテーマで報告希望の申し込みを受け付け、それらを幾つかのセッションに分けて構成する方法をとります。プログラム委員会では、予め以下の「セッション」を想定しておりますので、自由論題の報告希望者は、「報告申込書」に該当セッションを明記してお申込み下さい。

(1) 貿易理論 (2) 貿易実証  
(3) 国際金融・国際マクロ (4) 開発経済  
(5) 直接投資・多国籍企業 (6) アジア経済  
(7) その他の地域経済 (8) 国際通商体制・WTO・FTA  
(9) 環境・資源エネルギー (10) 国際政治経済学 (11)その他

「特別セッション」について

第70 回全国大会(2011 年)より、「ポスター・セッション」が設けられました。報告者との密
なるコミュニケーションが可能という点で、聞く者にとっても大変有意義な報告形式であり、本大
会でも実施させていただきます。本セッションでの発表を希望される会員は、第74 回全国大会ホー
ムページにあります「ポスター・セッション報告の概要」を参照のうえ、その旨を「報告申込書」
を用いてお申し込み下さい。また、新たな試みとして、ポスター・セッションの報告者全員に対し、
各自1 分間の「フラッシュ・トーク」の機会を設けることにしました。フラッシュ・トークとは、
大会1 日目のポスター報告に先立ち、各報告者がスライド1 枚を映写しながら、報告の主張やセー
ルスポイントを簡潔に口頭説明するセッションです。フラッシュ・トークについては、第74 回全国
大会ホームページにあります「フラッシュ・トークの概要」に示す要領に従い、ご準備ください。

「英語セッション」は、本大会では特別に設けませんが、英語による報告も可能ですので、英語
による報告を希望される場合は、自由論題の各セッション内でお願いします。なお、報告申込書に
て報告言語を選択してください。