日本国際経済学会第73回全国大会

京都産業大学
(2014年10月25日・26日)

大会論題

共通論題:「新段階を迎えた日本のグローバル化―課題と展望」

2008年のグローバル金融・経済危機以降、日本経済は直後のリーマン・ショック不況、その後の4年以上にわたる不況下の円高、さらには2011年3月の東日本大震災など、非常に厳しい局面を経験してきました。しかし、2012年11月の衆議院解散と同年12月の自民党政権誕生を契機として局面が大きく変わり、金融緩和への期待を直接の契機とした円安の進行と株高、機動的な財政政策の一環としての10兆円規模の補正予算の策定・執行、2%物価上昇率目標実現を目指した量的・質的金融緩和政策の開始、さらには日本復興戦略の策定などにより、長年の懸案であったデフレ克服の端緒が開かれつつあります。

こうした中、日本は中長期をにらんだ新たな課題に、従来にも増してより一層取り組まなければならない局面に差し掛かっているように見受けられます。第1に、2010年以降国論を二分してきたTPP交渉への参加が昨年7月に決まりました。しかし、事態は思わぬ展開を見せ、2013年3月には日中韓FTA交渉、同年4月には日本・EU間EPA交渉、5月にはRCEP交渉がそれぞれスタートし、従来二国間に偏重したFTA・EPA交渉が一挙に多国間交渉へと拡大していきました。そして、多国間FTA・EPA交渉の波は大西洋を挟むアメリカ・EU間のTTIPにも及び、その意味で昨年は「メガFTA時代の到来」とも形容されるべき年になったのかもしれません。WTOのドーハラウンドが目覚ましい成果を収められない現在、メガFTAは国際通商ルール作りを先導する重要な場となっており、この潮流にどのような戦略をもって臨むかは、日本経済の将来を占う重要な問題と考えられます。

第2に、昨年策定された日本復興戦略にも謳われているように、日本のグローバル化は「外に向けた」ものばかりでなく、日本の「内に向けた」ものの立ち遅れが意識されなければならないでしょう。国際経済学の基本定理の一つであり、「豊富な生産要素を輸出して国を小さくするよりも、稀少な生産要素を輸入して国を大きくすることが望ましい」ことを示唆するラマスワミ命題に反して、日本への対内直接投資や外国人労働者の流入は、他の国々に比べて依然低い水準にあります。少子高齢化に伴い労働力人口の減少、潜在成長力の低下が見込まれる中、外国からの投資や人材の受け入れについて、これまで以上に活発な議論をする時期が来ていると考えられます。また、地域経済の視点からは地域の固有資源や地域ブランドを活用した観光客の誘致や農産物取引の国際展開など、グローバルな視点から見た地域経済活性化に関する考察も強く意識されるべきテーマです。

そして第3に、日本の国際収支構造が歴史的な構造変化を経験している可能性があるということです。なかでもリーマン・ショック以降の輸出低迷と、アラブの春という地政学的要因をきっかけとしたエネルギー価格高止まりによる2011年以降の日本の貿易収支赤字化は、1960年代以降続くほぼ恒常的な日本の経常収支黒字基調に黄信号を灯しているかに見えます。事態は原発が再稼働されれば解決されるという性格のものではなく、2000年代の新興国の急速な台頭とキャッチアップさらには部分的なオーバーテイク、ならびに過去二度の石油ショック期に匹敵する高価格エネルギーの時代の到来がその背景にあると見られ、それがわが国の貿易収支赤字転換に反映されているのではないでしょうか。そして、こうした国際収支の動きが日本経済にとってどのような意味を持ちどのような課題をもたらすかは、今後の日本経済を考える上で重要な問題だと考えられます。

2008年のグローバル金融・経済危機以降、日本国際経済学会は「世界金融・経済危機-岐路に立つグローバリズム」(2009年度)、「グローバル金融・経済危機の行方-世界経済の転換点を解明する」(2012年度)、「2008年金融危機後の世界経済-アメリカ、EU、新興国における危機の様相と対応」(2013年度)と三回にわたってグローバル金融・経済危機関連テーマを共通論題としてきました。しかし、その余波は、完全ではないもののとりあえず一服した現在にあって、本年度の全国大会では少し視点を変えて、以上の問題意識から標記のように「新段階を迎えた日本のグローバル化―課題と展望」という共通論題で臨みたいと考えます。その上で、次のような問題領域を設定して共通論題を討議する機会を設ける予定です。会員の皆さまの積極的な参加とご発言をお願い致します。

共通論題のテーマ
① 日本の FTA・EPA 戦略
③ 対内直接投資と日本経済
⑤ グローバリゼーションと地域経済
⑦ その他
② 日本企業の国際化の進展と日本経済
④ 外国人労働者の受け入れと日本経済
⑥ 日本の国際収支構造の変化とその展望


自由論題

全国大会の「自由論題」につきましては、例年通り自由なテーマで報告希望の申し込み を受け付け、それらを幾つかのセッションに分けて構成する方法をとります。プログラム 委員会では、予め以下の「セッション」を想定しておりますので、自由論題の報告希望者 は、「報告申込書」に該当セッションを明記してお申込み下さい。

自由論題のテーマ
1.貿易・貿易理論
3.経済開発
5.欧州経済
7.アジア経済
9.グローバリゼーション
11.国際通商体制・WTO
13.環境・資源エネルギー
15.その他
2.国際金融・国際マクロ
4.直接投資・多国籍企業
6.北米・中南米経済
8.その他各国・地域経済
10.国際通貨制度・IMF
12.地域統合・FTA
14.国際政治経済学


「特別セッション」について

第70回全国大会(2011年)より、新たな試みとして、「ポスター・セッション」が設けられました。報告者との密なるコミュニケーションが可能という点で、聞く者にとっても大変有意義な報告形式であり、本大会でも実施させていただきます。本セッションでの発表を希望される会員は、第73回全国大会ホームページにあります「ポスター・セッション報告の概要」を参照のうえ、その旨を「報告申込書」を用いてお申し込み下さい。

毎年恒例となっております「日韓セッション」は、本大会でも実施させていただきます。「英語セッション」につきましては、本大会では特別に設けないことになりました。英語による報告を希望される場合は、自由論題の各セッション内でお願いします。







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お問い合わせ先

日本国際経済学会第73回全国大会準備委員会 のお問い合わせ先については「お問い合わせ」のページを御覧下さい。



日本国際経済学会第73回全国大会

  • 準備委員長:
    寺町信雄(京都産業大学)
  • プログラム委員長:
    大川良文(滋賀大学)

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