大会論題THEME

共通論題 「グローバル金融・経済危機の行方−世界経済の転換点を解明する」

 アメリカのサブプライム危機を端緒とするグローバル金融・経済危機は、世界同時的な財政・金融政策の動員によってとりあえず底を打ち、世界は戦前期の大恐慌のような深刻な経済収縮を回避することにひとまず成功しました。しかし、バブル崩壊後の日本経済と全く同じように、巨額の財政赤字と政府債務増加という代償を残しつつ、その後の調整は長期化の様相を呈しています。
 特に2011年には、ギリシャから始まりアイルランド、ポルトガルへと続いた危機連鎖がギリシャ危機の再燃へと連なっただけでなく、その後イタリアやスペイン、さらにはフランスなどのユーロ地域コア国の国債格下げまでに発展し、金融危機は銀行危機からソブリン危機の局面に転じてしまいました。通貨統合を契機として急速に進行した欧州域内の金融グローバル化が、奇しくも「国家なき通貨」というユーロの根本的制度欠陥をあぶり出す結果になったと言えるでしょう。
 その一方で、当初の震源地であったアメリカ経済の回復スピードは、住宅市場の不振と残存する家計のバランスシート調整などを背景として、従来パターンよりも大きく緩慢化しています。そして、長引く調整局面の中で、2009年以降の毎年1兆ドルを超える財政赤字を今後どのように解消していくかという重い課題が突きつけられています。
 翻って過去の歴史を俯瞰する時、2007年以降のグローバル金融・経済危機の展開は、少なくとも1980年代の中南米諸国の対外債務危機から始まり、その後日本・北欧、メキシコ、東アジア、ロシア、ブラジル・アルゼンチンそしてアメリカ・ヨーロッパへと続く危機の連鎖の一幕のようにも思われます。
 他方、日本を含む先進国経済が相対的に停滞を余儀なくされる一方で、同時に、世界経済は中国やインドなどのいわゆる新興経済の台頭を見ました。なかでも中国の成長スピードは顕著であり、その経済規模は2050年代にはアメリカをも凌駕すると予想されています。各国の生産性格差が大きくなかった産業革命以前には、人口規模が世界の経済パワーを左右していたことが知られていますが、ここ数十年における人口大国の経済的台頭は、人口の時代の再来を予感させています。もちろんその裏返しは、戦後の世界経済の帰趨を画した超大国アメリカの支配的地位の後退です。このように、近年のグローバル金融・経済危機は、世界経済のトレンド変化の大きな節目となっているように思われます。
 以上のような問題意識の下、次のような問題領域を想定して共通論題を討議する機会を設ける予定です。会員の皆さまの積極的な参加とご発言をお願い申し上げます。

@ グローバル金融・経済危機と国際経済体制の行方
A 欧州ソブリン危機と欧州統合の行方
B グローバル金融・経済危機と新興経済
C グローバル金融・経済危機と国際貿易・投資
D その他

自由論題 (自由テーマセッション)

 全国大会の自由論題につきましては、例年通り自由なテーマで報告希望の申し込みを受けつけ、それらを幾つかの分科会に分けて構成する方法をとります。全国大会準備委員会では、あらかじめ以下のようなセッションを想定しておりますので、自由論題の報告希望者は、報告申込書に該当セッションを明記して、お申込み下さい。

   1.貿易・貿易理論、2.国際金融・国際マクロ、3.経済開発
   4.直接投資・多国籍企業、5.EU経済、6.北米・中南米経済
   7.アジア経済、 8.その他各国・地域経済、9.グローバル金融危機
   10.国際通貨制度・IMF、11.WTO・貿易紛争、12.地域統合・FTA
   13.環境・資源エネルギー、14.国際政治経済学、15.その他

特別セッションについて

 昨年度の新たな試みとして,ポスター・セッションが新設されました。報告者との密なるコミュニケーションが可能という点で、聞く者にとっても大変有意義な報告形式であり、本年度も引き続き実施する予定です。付属資料を参照のうえ、このセッションでの発表を希望される会員は、その旨を報告申込書に記入してください。なお,日韓セッションのほかに、英語によるプレゼンテーションを行うセッション(英語セッション)も設ける予定です。具体的なテーマにかかわらず、英語による発表を希望される場合も,報告申込書に明記してください。

バナースペース

日本国際経済学会第71回全国大会
準備委員会

準備委員長 青木浩治(あおきこうじ)
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